柔術と景気

柔術界は不況を知らない
ふと思ったのですが、今の柔術界って、大きな経済不況にはまだ遭遇してないですよね。  
細かな不況はありましたが、直近の大不況は、サブプライムローン問題に端を発した2007年~2009年の「リーマンショック」です。もう10年くらい前ですね。

数日前にこれをツイートした直後、米中貿易摩擦等に引っ張られ、日経平均が400円以上下落したため、一応ちゃんと記事にしてみました。

格闘技道場はスポーツジム形態へ
当時の柔術道場は、なるべく固定費を掛けない、いわゆる格闘技道場らしい形態が多かったように思います。ひるがえって最近は、固定費をキッチリかけた、立地が良くて設備の整った道場がとても増えています。

この宣伝効果は素晴らしく、例えばこの状況が進んだら、競技の説明をするにあたり、もう「柔道の寝技だけ」とか「K-1のパンチキックなしのやつ(それお見合いじゃん!)」とかヘンな説明が不要になり、「ああ駅前にあるやつね」で話が通じれば、なんと素晴らしい世の中になることでしょう。

(空手の塗装方法と柔術の塗装方法)

また格闘技とか全く知らない方や女性に対しても、敷居は一層低くなっていくことも期待できます。

これが現在のおおざっぱな、柔術の状況ですね。

これ何のブログ?

2013年4月4日、日銀の黒田東彦総裁は、デフレ脱却とインフレ率2%増加を目指し、異次元の金融緩和政策に踏み切りました。

内容は簡単にいうと「日銀が国債をめっちゃいっぱい買う」というものです。なぜインフレ率を上げたいかといえば、物価の適正な上昇は、経済好調の指標とされているからです。

しかしインフレ率は上がらなかったため、2016年1月29日には「マイナス金利」なる施策が発表されました。

これも簡単にいうと、銀行って日銀にお金たくさん預けてるのですが、それに対して日銀が「ウチに預けているお前んとこのお金の利息、ちょっとマイナスにするわ。つまりむしろウチに手数料くれよ。嫌なら置きっぱなしにしないで、世間に投資して流通させな」という施策なのです。

これにより銀行は積極的に、世間一般の金融商品に投資したり、融資の量を増やしました。

結果として、世間に流通しているお金の量(マネタリーベース)は、2013年3月には134兆円だったのが、2018年6月にはなんと493兆円まで爆増することになりました。凄まじい増え方ですよね。現在の社会は、このようにお金が無茶苦茶いっぱいジャブジャブ余ってるという状況なのです。

これも柔術新聞
連動するようにして、株価も右肩上がりを続けてきました。

(2013年4月~現在までの日経平均株価/Trading View 週足:一番上の線です)

政局が安定しているのでリスクオン(現金預金でなく、株式等リスクのある商品に資金が向かうこと)基調が続いたからとか、大企業への融資が増えて設備投資できるようになったからとか、さまざまな理由が語られていますが、株価というのは景況感を表す大きな指標ですので、これをもって現在は「好況」であると語られる理由の一つとなっています。

このようにお金の量が3倍くらいになって、株価も好調、これが現在の世間の状況です(われわれ庶民実感として好況かどうかはまた別の話)。

暗転はあるのか?
変調の予感は昨年末からありました。

まず不動産価格がどうも天井を打ったのではという予測があります。オリンピック特需により、賃貸も分譲も商業用物件も非常に値段が高くなっているのはみなさんご存知の通りですが、それが最高潮から下落に転じた動きがあるというのです。

西新宿に建設されて話題となった高級タワマンも、売れ行きがいまいちという話。

一因として、中国の投資家が、中国政府の規制強化により、日本の不動産をあまり買えなくなったことがあります。

中国の銀行はもはや、不動産取得用の送金を受付けないまでに規制が進みました。

困った中国人投資家は闇銀行、つまり「Shadow Bank」を通じて日本への送金をおこなってきた訳ですが、この「Shadow Bank」に対しても中国政府は締付けを強化。結果資金の流れがとても少なくなったのです。

オリンピックまでまだ間がありますが、お金の流れというのは「ウワサで買って事実で売る」という言葉もあるように、その事象が始まる頃にはもう終わっていることが往々にしてあります。

長期金利と短期金利
長期金利と短期金利の相関を表した曲線を「イールドカーブ」と言います。

長期債券の金利は、短期のものより高いのが普通であるため、曲線は通常右肩上がりとなります。

これが右肩下がりになると「逆イールド」と呼ばれ、不況の前触れとして恐れられているのですが、世界経済の中心であるアメリカ国債のイールドカーブが、その形になってきているのです。

(米国2年債と10年債の利回り:Bloomberg)

日本においては日銀が国債をむちゃくちゃ買っているため(ほぼ100%)、残りの国債が少ないので値段が上がり、利回りが低下します(どうでもいいですけど債券はそれ自体の値段が上がると、利回りは下がるようになっています)。

そして日銀は、短期だけでなく長期の国債も大量に購入しているため、長期の利回りも低下します。

結果銀行は今までのように長期国債を購入し運用しても、利益を出すことが難しくなりました。そして外国債券等に適当に手を出して大損失を出すケースが軒並み表面化する等、銀行の業績が大変悪化しています。

(日経オンライン)

スルガ銀行がずさんな融資で大問題となりましたが、あのように無茶をしなければならなくなった背景には、銀行の融資業務低迷という闇があります。

また本来インフレ率が上がるまでの緩和政策だったのが、インフレ率が上がらないため(目標時期を6回延期しています)、なんと現在に至るまで国債を大量購入している事も危惧され、日銀の買い入れはもう限界だろうと言われています。

格闘技業界は未知の領域に来ている
ちょっと長くなりましたが、今後、景気後退の可能性も十分にあるのはお分かり頂けたかと思います。本当に来るかどうかは誰にも分かりませんし、こういうのってそんなすぐ影響出たりしないので、あくまで可能性の話です。

今まで格闘技業界は、経済状況という視点よりも、「PRIDEバブル」からの距離でもって、好不況が語られてきた印象があります。

それは格闘技自体の歴史が短く、経済状況の変化数がそもそも少ないため、PRIDEという特殊な環境にばかりスポットが当たっていたからで、今後は普通の業界と同じく景気動向に左右される部分がとても大きくなってくるのではないでしょうか。

また「柔術道場は意外と潰れない」とはよく耳にする言葉ですが、これはまさに、その経営方法が固定費を抑えたものである事を表していると思います。

しかし冒頭に申し上げたとおり、格闘技業界を取り巻く環境は徐々に変わりつつあります。そんな現在の我々の思考が、いわば好況という「ゲタ」を履かされたものである可能性があり、これまで普通だったことが普通でなくなることもあるのかどうか、今後の影響に関して、我々は等しく「未知の領域の目撃者」となっていくでしょう。

存在自体が世間への宣伝
柔術や格闘技道場は、世間への認知という効能に限れば、多ければ多いほど良く、道場の存在というのは、競技を楽しむ人たちみんなに共通の財産だと思います。

理想として、今後も競技人口と道場数が右肩上がりに増えるよう、経営努力がちゃんと、成果に繋がる経済状況が続くことを切に願います。