マッケンジー・ダーン技術研究 体格差を埋めるもの

マッケンジーが本当に来ちゃう

いよいよ11月1日土曜日に、マッケンジー・ダーン「Strongly,Rightly, and Beautifully」セミナーが迫ってきました。

マッケンジーのバックボーンはグレイシーウマイタ。ウマイタといえばシンプルなフォームで激深の技術が特徴ですよね。

僕がなぜマッケンジーのセミナーを決定したか、それは「力に頼らないベーシック技術」が見れると思ったからに他ありません。

べーシック技術の仕上げ方


これは今年のダラス・オープンでの試合。
マッケンジーはこの大会、見事階級別を制しましたが、動きがビックリするくらい速くて、しかも手順が完璧なのです。ヤバイですよ。ダテに19でウマイタの黒帯取ってないです。

冒頭、柔軟な股関節を活かしてすぐにニースライスの足を相手のガードに乗せ込んでしまっています。

そして相手の脇を深く挿しすぎないよう、良く考えられた位置に腕をおいてポジションを固めていますね。

相手はディープに逃げようとしますが、マッケンジーのヒザの乗っけ方が上手で既にヒザが抜けている状態になっており、そのうえ上半身を殺しきってお尻をとても高く上げているので、大変不利なディフェンスを強いられています。

身体はとても小さいマッケンジーですが、力に頼らない大変見事なプレッシャーのかけ方、そしてとにかくセットアップがスピーディで、相手がリアクションする前に形を作ってしまっていることに注目です。

パワーで後からごまかしたりできないため、ポイントを一度の動作で完全に押さえ切る技術が必要になってくる訳ですが、マッケンジーはそれをあっという間に遂行してしまっています。

そして2分10秒過ぎ、見事に完パスするのですが見て下さい。相手の首から肩のラインを、黄金の三角形を形作って一分の隙も見せずに塞いでいます。これぞまさにグレイシー・ウマイタの真髄、完璧なベーシック技術ではないでしょうか。

この小さな身体で相手の腕も引いていないのに、相手は全く返せないですね。パス際に色々されちゃうことって多いですけど、それってこういう事がちゃんと出来ていないからではないでしょうか。

そしてパスしてからすぐに、逆サイドorキムラの定石を狙っていますね。このまたぎ方もビューティフル。

同じくウマイタはホイラーの黒帯であるシャンジ・ヒベイロが、逆サイドの十字やノースサウスのキムラを狙うときは「相手の手前側ワキを制せ」としきりに強調していましたが、マッケンジーは細心の注意を払って最後まで制しきっていることがお分かりいただけると思います。

キムラは相手が頑張ったので、力で無理押ししたりせず逆サイドのバックに切り替え。これも上半身を完全に殺しているので難なく成功し、絞めで一本勝ち。

個人的には最後の絞めにも注目です。ボウ・アンド・アロウを使っていません。

サウロ・ヒベイロはじめウマイタの選手っていつもではありませんが、現在バックチョークの主流であるボウ・アンド・アロウの体勢にしないで、両手でしっかり襟つかむ絞めを多用する傾向があると思います。これも何か理由があるのかもしれませんね。

マッケンジーの完璧な試合運び、特別な技術や体勢を使わずとも、今すぐ気をつけられるポイントというのがベーシック技術にはたくさん隠されており、そしてそれは力に頼ったものではなく、速度と正確性によることが分かると思います。

そのポイントを是非教えてもらいたいと思っています。

サイドアタックと末端への攻撃

こちらはダラス・オープン、相手の強烈なタックルから体勢を崩したマッケンジーはバックまで取られ、大変な苦戦を強いられています。

しかしそこからガードに戻すと、その後は猛攻を開始。8分30秒から、凄まじく煽り倒して相手の左足に付きます。

この動作がとにかく速く、そして正確なので相手が反応できていません。あっという間に膝十字のセットアップを完了して1本勝ちです。

相手の片側を攻めるこの戦法はマッケンジーの常套手段で、小さな身体で相手の重心を崩す術を熟知しています。

そして足関節による1本が多いのも特徴。少ないパワーを効果的に使うため、相手の末端を狙うことを徹底していますね。

というかマッケンジー、1本勝ちが凄く多いんですよね。そういうのにはやはり理由がありますね。

けれど正体はヤングなガール


マッケンジーのベーシックが完璧なもので、それによって体格&パワー差を無力化していることは分かりましたが、さらに上積みを持っているのが名選手たるゆえん。

アメリカン・ナショナルズの決勝では、いきなりベリンボロでかっ飛んでます。その後50/50の攻防も上手く対処し、インバーティド・トライアングルのようなセットアップで見事な1本勝ち。

女性の強豪選手は三角が上手な人が多いですが、マッケンジーもその一人ですね。柔軟な身体を活かしています。自分の体の特徴を知って、無理をさせない勝ち方のルートを持っているのだと思います。

これを日本で

日本人柔術家は、僕も含め身体がそこまで大きくなかったり、力も向こうの人みたいに強くない人が多いですよね。

マッケンジーが示したような正確なベーシックの有効性は、まさに僕らのような身体能力で優位に立っていない人間が修得すべきものだと強く考えています。

特に軽量級の柔術家の方は、是非一度色々なポイントを確認して頂けたらと考えています。

そしてその必要性がより強いのが女性の柔術家の方ではないでしょうか。

やはり身体能力を同じくする、つまり女性のトップ選手が掲示する技術と戦略は、取り入れるにあたって身体能力を勘案した修正を入れる必要の無い、つまりそのまんま使える即戦力技術であると思うのです。

女性のトップ選手は中々来日機会が無いので、ご興味ある方は是非ご検討下さい。セミナーがどういう感じか感触を知りたい方は是非是非僕の方までご連絡頂ければと思います。即決の必要とか無いので、内容をご説明させて頂きます。

どうかよろしくお願いします。

JBJJFによる、国内大会における薬物検査導入に関して

日本で柔術を愛好する人間として、非常に誇らしい決定がJBJJFから発表されました。

柔術競技における薬物検査を行う環境が整い、様々な準備が整い次第、開始されることになったのです。
http://jbjjf.blogspot.jp/2014/09/blog-post_50.html

これは画期的な決定です。国内の総合格闘技等でも薬物検査は切望されてきましたが、とても煩雑な手続きと実行資格取得の困難さ、そして高額な費用によってその多くが挫折。

今回のJBJJFによる快挙は、日本の格闘技史上においてもエポック・メイキングとなる事例であると思います。

海外の柔術界における薬物の蔓延具合は残念ながら、深刻とかを通り越してもはや笑ってしまうレベルです。

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僕の友人である黒帯選手は、世界的にトップクラスの権威を認められている国際大会に出場しました。

彼はそこである練習会に参加したのですが、そこで彼が見た光景はとてもおぞましいものでした。

ムンジアル王者数名を含む有名選手の一団がマット上で車座となって尻に注射を打ち合い、ある者は腿にズブリとやり、ある者はゴクゴク経口から摂取していながら口々に「俺たちゃ負けるためにこんな所まで来たわけじゃないからな」と言い合っているという、もはやグレイトフル・デッドのライブ会場真っ青のドラッグ・ミーティングとなっていたのです。

選手同士が道やサウナですれ違えば、交わされる言葉は時候の挨拶と「どのおクスリがキクか」が話題の定番。

その後、友人は試合会場でギの上着を脱いで、上半身裸の状態でその辺に座っていました。するとあるアメリカ人ファイターが「なんだ負けたのか?青帯か」と話しかけてきました。友人は「いや、黒帯だ」と答えるとそのアメリカ人はビックリしたように「黒帯?その身体で??お前まさか使ってないのか?何考えてんだ?勝ちたくないのか?」と応答しました。激昂した友人は、危うくその男と喧嘩になりそうになったそうです。

友人は十分とんでもない身体能力を持った選手ですが、クリーンで、しかも生まれつき細いため、チャンピオンの多くがそうであるようにウルトラースーパーな体つきではありません。

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このアメリカ人が言ったような「薬物をやらない=やる気がない」的な思考は、とても良く聞かれる考え方です。

格闘技界とは奇妙なもので、しばしば非常に不思議な思考法が支配的となります。いわく、「薬物をやること自体はそんなに悪いことじゃない。勝ちたい気持ちが強いだけなんだ」みたいな感じですね。

そしてこれらは往々にして進行し、「富を得るために仕方なくやっている。悪いのは貧困だ」「薬物を使うのはそこまで努力している証拠だ。勇敢な行為だ「なんでお前は使わないんだ?」という理論に発展していきます。

いやいやいや、悪いもんは悪いんです。
お行儀の悪い柔術家になってはいけません!

zappa
黄色い雪は食べちゃダメ!!

柔術は人体へのダメージを競う競技ではないですからね。そんなのもはやスポーツでないです。そういうのがやりたい人は、ヒンドゥー教とかにチャレンジしてみればよいと思います。

こういう酷い状況にはっきり「No」と言い切ったJBJJFの決断はどれだけ賞賛されても、され過ぎという事はないでしょう。まさに画期的だと思います。

一時アンチドーピングの機運が世界で盛り上がりましたが、早速形骸化しつつある悲しい現況に、間違いなく一石を投じることとなるでしょう。

元ムンジアル王者であるブラザの首領フェリペ・コスタも、今回のJBJJFの決定にたいして大賛辞を送っていましたね。彼はアンチドーピングのムーブメントに対しては、いついかなる時でも惜しみない協力をしてくれます。

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(photo by Mike Calimbas)

そして長らくドラッグと戦ってきたもう一人、カイオ・テハが今回の決定に対してメッセージを送ってくれました。
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「スポーツのクリーン化はキッズ柔術の成長のための巨大な第一歩だ。キッズ柔術の未来は柔術の未来に等しい」

一体全体どこの親が自分の子供に薬物が蔓延するスポーツをさせたいと思うでしょうか。薬物蔓延にある先は、柔術の死です。

カイオ・テハ、ホドリゴ・コンプリード、そしてフェリペ・コスタ、彼らはいつも薬物使用にはっきりと反対の立場を表明してきました。

思うに、アメリカやブラジルでステロイドと戦うのは、我々が想像するよりも大変なことだと思います。本当に勇敢な行為というのはこういうことではないでしょうか。
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