現在のブラジリアン柔術最高峰の試合、ハファエル・メンデスvsパウロ・ミヤオ

柔術技術に革新をもたらし、ハファエル前とハファエル後では、全く柔術の風景を変えてしまった天才と、その技術を強力に推し進め、特に「ダブルガード」「ベリンボロ」の部分を空前絶後のレベルにまで仕上げてしまった死の天使がついに激突!!これは柔術界でも長く待ち望まれた対戦でした。

ハファエル・メンデス(ATOS)vsパウロ・ミヤオ(PSLPBシセロ・コスタ)


 まずハファエルの体格に目が行きます。
白のギだからというのもありますが、背中がデカいですね。モダン柔術の魔王的な風格が漂ってきました。

そしてダブルガードの攻防ですが、これが緊張感あります。
技を積極的に仕掛けていってるのはパウロの方。ラッソーを主軸に回転していって、相手を陽動します。

一方ハファエルは凄い強そうなグリップでガッチリ掴んで、とにかくベースだけは絶対崩されない!と言わんばかりのポスチャーファースト・スタイル。

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しかし相手よりもベースで勝っているなら、この戦い方はアリですよね。
チャールズ・ガスパーDVDに収録されているベリンボロ・ブレイカーも、基本的にはこの思想によるもの。
詳しくは技解説記事に書きますが、これが最もイヤだそうです。

しかしハファエルのダブルガードは、ほぼ膠着と言って良いほど動かず、実際ルーチで両者にペナルティが入ります。パウロ相手だと、ダブルガードではやや打つ手が無いように見えます。

そしてそこからハファエルが最初に立ち上がります。
明らかに実力が下である相手に対しては別として、この場面でハファエルが先に立つというのは、彼のムーブ史を追ってきた日本のファンからすると感慨深いものがあるのではないでしょうか。

最強に近いスイープ力で、「上に行くと不利」という風潮を作り、結果相手も座ってダブルガードという状況を頻発させるようにしたのが誰あろうハファエル・メンデス。

しかしその革新者、今度は従来と一味も二味も違った「ネオベース」の重要性を認識させる試合展開を見せます。

パウロの超強力なラッソーに対し、巻かれている腕を下手に抜きに行かず、逆足をガッチリキープしながら受けに徹します。

そしてキープするグリップも、相手の末端に行かないで、なるべく腰パン部分だったり、内股だったり、より強力にキープできる腰部周辺を抑えているのが凄いですね。

普通パウロ相手にそういう悠長なキープの仕方していたら速攻で飛ばされそうなモンですが、鉄のような足腰でパウロの崩しを跳ね返しています。

そして常にヒザは入れておく。
基本と言えばそうなのですが、同階級でパウロ相手にこれが出来る人は、多分この世にハファエルとコブリンヤくらいでしょう。

5分近くにパウロが一瞬根負けするかのような仕草を見せますが、ハファエルのベースから発する圧力がいかに恐ろしいかが分かるかのようです。

そして最初のクライマックスが。
5分20秒過ぎ、パウロがラッソーからキス・オブ・ザ・ドラゴンに行き、インバート姿勢のまま一瞬ストップします。

ここでハファエルが猛然と襲いかかる!!!

インバートした相手のへの対処は誰もが頭を悩ますものですが、ハファエルはこれを跳びつきレッグドラッグのような形で破砕しようとします。

インバートに対するこの方向へのアタックは度々見せていて、スパーとかだとここからローリングし見事カウンター・ベリンボロのような形を作るハファエルですが、ここでは完全ガチのニュータイプ・ムーブへ。

パウロの右足を押さえつけるような形のフックにし、決して自由にさせることなく、自身はそこから逆さになってそのフックをチェンジ!!
ベリンボロの途中みたいなフォームにしてしまいます。

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これはまさに、加古拓渡選手も標榜する「どこでもベリンボロ」の1形態「上からベリンボロ」のヴァリエーション!!!!!

しかもレッグドラッグに行くのでは無く、あくまでベリンボロとしてのムーブを完遂し、「ケツ裏からバック」を狙います。

まさかあのパウロが足の組み換え戦から、ケツ裏を狙われる状況になるとは。
しかもハファエルは逆さでのベースが超強力、フックもバッチリで、パウロが完全に動けなくなって必死で逃げようとしてますよね。

やはりベリンボロのご本尊。
「逆さベース」という新しい概念を掲示し、革新者としての恐るべきカルマを感じさせる一連の動き。

試合はここからヒート。

難を逃れたパウロが猛攻を開始し、デラヒーバからの煽りでハファエルのベースを一瞬崩します。

これまたハファエル史を知る方にとっては驚嘆のシーンですよね。

危険を察知したハファエル、再びウンチング・スタイルのベースキープに戻ります。
ハファエルのこの姿勢、どんだけ強力なんですかね。パウロが必死で崩そうとしますが、ビクともしません。まさに王者の風格。

そして6分40秒過ぎ、パウロがホレッタのような形でスイープを伺うと、ハファエルもそれに合わせて大好きな股中ポジションへ。

先ほどのアタックといい、黒帯中期以降のハファエルは、相手の広げた股に対してそのど真ん中に、しかも下向きで取るポジションが大好きです。

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特にスパーで頻繁に見せるこのアプローチ、ローリング・レッグドラッグも結局はその派生技ですよね。

そしてまたもや超強力「逆さベース」登場。逆さになったままガッチリ相手をキープし続けます。

ここでハファエルの左足に注目。機械のような動きでパウロの頭部を沿うようにホールドしていますね。しかも同時にパウロの左手を押し下げて、押さえ込みやすくしています。
この動きがあるから、次の三角ロックをスムースに繋げられるわけですね。

パウロのスイープを空中で受け止めて、そのまま絡め取ってしまったかのようなパスガードですが、ここでの3ポイント、固定されているとはいえパウロはだいぶ半身で亀になる途中みたいだし、そもそも頭のロック外してから押さえ込まないとダメなんじゃないの?という意見が海外でも多く出ました。

IBJJFの公式審判員であるオリヴィエ・ゲディスは、例えばガードから跳びつき三角で上になった場合、三角ロックを外さなくてもしっかり押さえ込んでいればパスガードの3ポイントが入る例をあげ、このジャッジを支持しています。

しかし質問した人の中には「俺、跳びつき三角で何回も上になったけど、一度もパスガードと認められたことないぜ・・・」とイマイチ納得してない人も居ます。まあ宣告されてしまったものは仕方ないですね。

ロックが外れると、パウロも速攻戻してしがみつくようなディープ・ハーフに。この体勢からハファエルが全く押さえ込めないとは。

しかしパウロ、ズボン裾の中掴みをしてしまい、2個目のペナルティでハファエルにアドバン1が入ります。

パウロは結構ズボンの中を掴みますよね(笑)。あの伝説になりそうな杉江アマゾン選手との試合でも、だいぶ中を掴んでたように思います。やりますね。

そしてここからパウロ猛攻!!!
先ほど空中パスされてしまった内回り後転系を、しつこく続けプレッシャーをかけまくります。試合も終盤にさしかかり、ハファエルも段々ベースを取れなくなってきます。

そこから試合は50/50の展開に。ここで先んじたのはパウロ。

もう考え付く限りのものを引っぺがしてグリップを強固にし、ケツ裏もガッチリ掴んで、行くぜ50/50ベリンボロ!!!!
これがあっさり決まる!!!!審判がスイープの2ポイントを宣告しようとこぶしを挙げた刹那、ハファエルがゴロンと元に戻る!!!

大変惜しい場面でしたが、ここはレフェリーこぶしを戻してニア・スイープのアドバンを宣告するに留めました。

この後はハファエル完全に逃げ切り体勢で必死にホールドを続け、そのまま試合終了。

意気消沈のパウロに、天を仰ぐジョアオ。

思えばハファエルとコブリンヤの初戦も、確か完パス含む5-2くらいでコブリンヤが勝利しましたよね。詳しくは忘れましたが。

今回の戦いは、キワのシャープさが勝敗を分けた一戦だったと思います。もちろんそのキワは、従来の物とは天地も逆転していて全くベツモノではありますが。

そもそもミヤオ兄弟のムーブ思想として、キワで争う余地があったら、その狭いスペースを全て回転で埋め尽くすという特徴があると思います。ジェフ・グローバーみたいな感じですね。
だから相性みたいな部分はあったと思いますね。キワの部分でハファエルはタンキーニョに敗れている訳ですが、それは通常のキワ。
あんな特殊体勢でのキワを引き出せるのは、パウロしか居ない訳ですからね。

今回パウロは挑戦者らしく積極的に攻め、ハファエルは王者らしくドッシリと戦った一戦だったと思います。

パウロがセミナーで散々語っていた「パワーで負けたらもうしょうがないよ(笑)」という状況が、まさに現出したといえると思いますが、今頃パウロは泣きながら筋トレしてるのではないでしょうか。

超テクとハイパワーが理想的に結合するモダン柔術最強の戦士ハファエルの牙城、いつか崩せるときがくるのでしょうか。

今後数多く見られるであろう両者の対戦が待ち遠しいですね。

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