楽しいは強い!!柔術界の奇跡は、楽しさの軌跡!・・・ポゴナ・クラブジム訪問パート②


前回は僕と弟が、航海王とプルーマの皇帝の手によって華麗にボコられた所までをご紹介しました。
 

一体このポゴナという道場の強さは、どこから来るのでしょうか。



2005年からスタートしたポゴナ・クラブジムですが、最初はそもそも先生がおらず、当時まだ青帯であったのちの航海王大原道広選手が柔術クラスを開始。

その数ヵ月後にこれまた青帯の金古一朗選手が合流し、さらに後に山田悦弘選手も参加、そうやってこの3人が揃っていったそうです。


それにしても先生が居ないとは・・・。
どうやってここまでの、強豪揃いのジムにしていったのでしょうか。

僕はポゴナの強さを探るべく、まず湯浅麗歌子選手にインタビューを試みました。
湯浅選手といえば日本柔術界に燦然と輝く宝石。
現在最も有名な女性柔術家の1人ですよね。


しかもそのアイドル性に寄り掛かる事なく、試合に出まくり、常に世界での結果を追い求める競技思考のストイックさが支持されている、現役バリバリ感が非常にポゴナらしいトップ選手です。

湯浅「柔術を始めたのは高校1年生の終わりですね。きっかけは太ったからです(笑)。

幼稚園の時から中学生まで、水泳、柔道、レスリングと、とにかくスポーツばかりやっていたので、高校では勉強頑張ろうと思ったんです。いわゆる文化系女子を目指したわけです!ちなみに高校3年間はバンド部でした(笑)。

でも半年くらいたつと、身体に異変を感じ、体重計に乗ったら過去最高に重かったんですよ!!!もうショックでショックで・・・。あの筋肉たちはどこに!?って感じでした。そのあとはとにかく身体を動かしたくて、格闘技(寝技)をやろうと決めました。流行っていましたからねあのとき!」
おお、柔術を始めるきっかけは、とても女性らしい理由だったのですね。
湯浅さんが柔術を始めた頃のポゴナはどういう陣容だったのでしょうか?そしてどんな事を教わりましたか?

湯浅「金古さんも大原さんも茶帯だったと思います。基本の技はひと通り教えてもらいましたね。十字、三角、オモプラータ。格好いい技も教えてもらっていましたが、私自身基本が全然できていなかったので、まずは教わった基本の動きを忘れないようにと、とにかく教えてもらったことは全部、ひたすら打ち込みをしていました。」
うーん、非常にストイックな姿勢です。
だから湯浅さんの試合を見るたびに、動きが鋭くなっているのですね。

湯浅「技術的に日々進化しているであろう理由は多分、打ち込みやムーブメント、限定スパーのおかげかと。とにかくこの3つはやりまくってます。

あとは、疑問を残さないようにすることですかね。思った事や分からないところは、とにかくすぐに色々な人に聞いて直します。

どのポジションでも、自分が何をしたいのか、何をしなければいけないのかがわかっていない時は、絶対に負けますからね。これが正しい練習方法なのかは分かりませんが、間違ってはいないと思います!少なくとも今の私は去年の私に100パーセント勝てます(笑)」
素晴らしい姿勢です・・・。
去年の自分に年中負けまくっているどこかの36歳に聞かせたいですね・・・。

湯浅「自分は柔道もレスリングも結果を残せなかったし、今だって世界に通用するレベルの選手では全然ありません。

けど『寝技は誰でもいつか強くなれる』って言うじゃないですか。毎年、去年の自分より強くなっているのがわかるし、なにより寝技が好きなので、何年かかるかわからないけれど、強くなると信じて毎日練習しています。

ってなんか偉そうですけど、結局『柔術が好きだから!』っていうのが一番正しい答えかもしれませんね。」


湯浅選手にお話しを聞いて、僕はポゴナが強い理由が、少し分かってきた気がしました。
それはここまでお読みになったみなさんも同じかもしれません。


そして僕はそれを確信に変えるため、ポゴナ・テクニックの象徴であるシュラプネル・ガードを操る金古一朗選手にお話を聞きました。

ちなみにこの「シュラプネル」という言葉、これは1980年代のアメリカにおいて、強烈な技術革新を成し遂げたギタリスト達が所属していたレーベルの名前で、ギターにおける超絶テクニックの代名詞とも言える言葉なのです。


そんな七色のスーパーテクニックを持ち、あの山田悦弘選手も「金古選手がいつも先を走ってくれていたから、僕らも走れた」と振り返るプルーマの皇帝金古一朗選手、一体どうやってあの凄まじい技術を培ってきたのでしょうか?

ブス「以前は結構パワースタイルというか、上からガンガン攻める方だったそうですが、どういうきっかけで現在のようにテクニカルなスタイルにチェンジしたのですか?」
金古「前はペナ級で大会に出場していたのですが、紫帯に上がって塚田さん、若林琢磨選手、そして中村大輔さん・・・、そういう言わばバケモノみたいな人達と当たりまして、こりゃこのスタイルだとちょっともう限界だな、と(笑)。

その時ちょうど吉岡大さんが週一でポゴナに来てくれる事になって、それであのテクニカルなスタイルを目の当りにしたんです。」

ブス「おお、吉岡選手!!」
金古「吉岡さんはもちろん力も凄く強いんですけど、無理に力任せとかは全然無いじゃないですか。キチッキチッと使うべき所では力も使うし、それ以外の所は凄く柔らかいし。

そういうのを見てて『ああ、こういう感じでやっていかないとこの先ダメだな』と痛感しました。そういうのって、当時は自分のジムの中だけでは分からなかったんですよ。

あの頃は2007年くらいだったんですけど、当時のポゴナはまだ技術とかでなく、ただガツガツやるだけだったので、そういう物凄く上手い人が来てくれて、初めて見た生きた教材みたいな人を見る事ができて、変わっていったと思います。」
ブス「吉岡選手の影響が大きかったのですね。
金古「今はフィジカルの大切さが浸透していてそれほど言われなくなりましたけど、当時は『柔術は力を使わない』とか『柔術は技が全てである』的な事が言われていたと思います。

ただ自分からすると、『力を使わない』とはどういう事なのか、全然分からなかったんですよね。そこで吉岡さんを見て、初めて『ああ、こういう事か』と分かった気がしますね。有難かったです。」
ブス「あの必殺『問答無用パス』も・・・
金古「はい、吉岡さんの影響です。最近はあまり使われないですけど、当時は凄く『問答無用』やってて。」
ブス「あれってそのまま後ろにぶっ倒れたりはしないんですか?」
金古「練習すれば無くなります。」


ブス「他のポゴナの会員さんに話を聞くと、いつ来ても金古さんが打ち込みやっていると口を揃えて言います。打ち込みっていつもどういう感じで、どのくらいの頻度でやっているんですか?」
金古「現在はですね、月曜日はエジソンさんと打ち込みを1時間30分くらいやってるんです。


その後限定スパー30分くらいやってるんです。水曜日の夜はもうスパーしない日って決めてます。ウチの紫帯の人と1時間30分から2時間くらい打ち込みします。」
ブス「1時間30分から2時間打ち込み!!」
金古「そうですね。木曜日がデラヒーバ・ジャパンの山田秀之選手と、やっぱり昼からそれくらい打ち込みして。土曜の夜もスパーしない日って決めてるんで同じようにやって。

今日(日曜日)も、練習終わって6時からRJJの山田大聖選手とやります。だから週5~6回、1時間30分から2時間打ち込みをやるという感じですね。」
ブス「凄い量ですね・・・」
金古「10本くらい交互にやってると疑問が生まれてくるので、それを突っ込んでやるようにしています。だから機械的な打ち込みというよりは、研究込みで限定スパーのような形で。

相手の人に動いてもらったり、イレギュラーな動きが出てきたらここはどうするかとか、機械的にならないように気をつけてやっていますね。

今年になってからですねこれだけやり始めたのは。やっぱ打ち込みちゃんとやんないと、これ以上にはならないなと思って。」


これが研究付き打ち込み風景!
シチュエーション設定が異常に細かい事にご注目!!
こうやって1つ1つ丁寧に組み立てていってはじめて、あの金古スタイルが完成するのですね・・・。

ブス「試合で打ち込みの効果は実感しますか。」
金古「そうですね。考えないで出来るようになりました。自分はそんなに器用なタイプじゃないんで。」
ブス「え、とてもそうは見えません・・・」
金古「いや、ベリンボロとかも、ただひたすらスパーとかでやってるだけじゃ絶対できないです。あれ一回諦めましたもん(笑)。これなんかダメだなあって(笑)。これ向いてないんじゃないかって。これナシでもいいんじゃないかなーって思ったんですけど(笑)、やっぱりやらないとダメだなって。ベリンボロ等の最新技術に対しては、けっこう葛藤がありましたね。」
ブス「しかし今やGSB加古拓渡選手と並ぶベリンボロの使い手です。」
金古「立体的な動きって、打ち込みしないと体に入っていかないんですよね、僕の場合。頭の中でやれる人もいると思うんですけど、僕は違います。」
ブス「金古選手は選手としての実績が既に十分素晴らしいですが、そういう地位を確立したあとも、新しい技術を取り入れていくのですか?」
金古「取り入れますね。僕は例えば、自分のフィールドに相手を引きずり込んで戦うというやり方が得意ではないんです。相手が何をやろうとも自分はコレで行く、みたいな戦い方では無いのです。

流れの中で、状況に応じて、自分が必要と思った技を1つ1つはめ込んで行くような試合の組み立て方が好きなので。だから技のバリエーションが必要なのです。」


状況に応じて、必要な技を次々と引き出す・・・。
誰もが考える柔術の理想形態ですが、それを実現するとなると並大抵ではないですよね。


出したい技なんて有り過ぎるし、そもそも出来ない技が多いし・・・。

千変万化の多様性を誇るシュラプネル・ガードですが、その技術的強度を支えているのが、打ち込みや限定スパーをはじめとした、集中度の高い練習なのでしょう。

そしてプルーマの皇帝が2012年圧倒的な強さを誇った事には、もう一つの理由がありました。


ブス「生田誠選手についてお伺いさせて下さい。」

金古「初対決が2011年の5月だったかな・・・。生田さんの方が先輩の世代にあたるので、今まで対戦する機会がありませんでした。

まず生田さんは試合前でも凄くフレンドリーで、そこに驚きましたね。僕なんかは試合前だとキッっと緊張しちゃって、他の事できなくなるんですけど(笑)。こういう人も居るんだなー、って思いました。

で試合したら予想より遥かに強くって(笑)。その年は3回やって3回負けました。だから本当は今年もガンガンやり合って、『打倒生田!』って感じでやりあってたはずだったんです。だから僕も落ち込みましたね。」
ブス「そうだったんですね・・・」
金古「その時に約束したんですよ。生田さんが休んでいる間は自分が勝ちまくって、俺自身の価値を上げますって。

そうすれば俺が3回やって1回も勝てなかった生田さんは凄い強いんだ、って事になるじゃないですか。これで俺が試合出て勝ったり負けたりだったら、生田さんまで大したことなく見られちゃうと思って。それがあったから、2012年これだけ頑張って走れたのだと思います。」


試合ではいつも冷静にスーパーテクを繰り出す金古選手ですが、ソウルはスーパーアツい漢ですよ・・・。

そしてポゴナのガード皇帝は、次のステップに向かいます。
ブス「加古選手のベリンボロ・セミナーは、金古選手が企画しているセミナー構想の一環だとの事ですが、それはどのようなアイデアなのでしょうか?」
金古「遠征ってやっぱりお金がかかるじゃないですか。仙台や名古屋でも、新幹線使ったら交通費2万円とかですし。だからこっちに来る選手に、お金を稼いで貰おうという訳です。

僕自身が遠征する時もどこかでセミナーやらせてもらって、交通費プラス少しでも稼いで、要はお互い交通費を捻出し合う分けですね。

今回は柔術プリーストの前日という日程でしたが、同じようにドゥマウとかでも日程を合わせて、いろいろな企画が出来たらいいなと考えています。

そうやってネットワークを作って行って、今の現役トップの選手が知っている事がどんどん広まっていけば、日本の柔術も、さらに一段階上に行けるんじゃないかな、と思います。」

これは素晴らしい構想!!!!!
誰もが頭を悩ませる遠征費。
これを柔術の技術を活かして、相互に補い合って解決するというこの選手間の動き、絶対広げたいですね!!

選手は費用の助けになりますし、僕らは素晴らしいテクを教えてもらえる。
柔術ナイス循環来てますよ!!!!!!!!!

そして折角ここまでハイテクな選手にお話し聞けているのですから、僕みたいな初心者にアドバイスを貰わないと!!!
ブス「柔術始めたばかりの人に何かアドバイスはありますか?例えばベーシックを繰り返す、とか・・・。」
金古「僕は、型にはめるような事はしないで、自分の好きなようにやればいいんじゃないかな、というのがあります。基本をキチっとやれとか、そういうのは特に無くて。
ポゴナがそういう環境じゃなかったですからね。

僕が入ってきた当時も、みんな白帯・青帯の人が中心となって、『ああでもないこうでもない』ってやっていて。そんな中で色々なスタイルの選手が育っていきました。

僕は色々な技を研究して使うのが好きだったのでそういうスタイルになりましたし、ハーフで固めてひたすら塩漬けみたいな人も居ますし(笑)。けど試合でそういう人と当たる事はあるので、そういう人が居てくれるとありがたいですね。どっからでも袖車しか狙って来ない人も居ますし(笑)。

だから僕は、こうすべきだというのは特に無くて、とにかく楽しく!です。」
ブス「楽しく、ですか」
金古「楽しければ自然に練習量も増えますし、練習量増えれば絶対に強くなるし。だから相手にケガさせなければ、練習方法とかスタイルに関しては、ぜんぜん自由にやってほしいですね。楽しんでやって下さい。それだけです(笑)!」

 

さきほどの予兆は、ここで確信に変わりました。
柔術の楽しさを最大限に引き出し、その楽しさを原動力にして、妥協せず、自身の限界にチャレンジしていく・・・。

ポゴナは、その楽しさを引き出す力が素晴らしいのではないでしょうか。


その上で、トップ選手は丁寧に教える事以外はあれこれ言わず、練習量と成績で手本を見せる・・・。
いわば背中で語る訳ですね。


そしてその背中を見て、あとの人が育っていくのです。
これが次々と強豪を輩出する、ポゴナの強さの秘密なのではないでしょうか。

 

ここで1人の選手を紹介させて下さい。
藤本宗平選手です。
先ほどの打ち込みで、金古選手の相手をつとめていた選手ですね。

年齢は僕と同じ36歳。

そしてこの動画の時点で、柔術を始めて2年1ケ月くらいです。

藤本宗平(ポゴナクラブジム)vs岩井英治(ストライプル早稲田)

いやいや上手すぎるでしょ!!

強くなる過程は人それぞれですけど、2年でこれは素晴らし過ぎますよ・・・。
まさにポゴナらしい選手!

年齢がたってから柔術を始める事で、上手くなれるかどうか不安の声が良く聞かれますが、そんな心配を吹き飛ばすかのような選手ですね。

他人と違う所があっても、楽しくたくさん練習していれば、いつか必ず強くなれる。

そんなポゴナの成長ぶりと軌を一にするような、素晴らしい選手ですよね。

これからも是非頑張って下さい!

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