2012年ムンジアルまとめ②・・・勝者の覚悟

事前のまとめでは重量級を取り上げられなかったので、今日は201

2年ムンジアルにおける中・重量級のトレンドを追っていきたいと思います。
まずはレーヴィ級、優勝したのは破壊神レアンドロ・ロ・ペレイラ!!

ライト級準決勝・・・レアンドロ・ペレイラ(PSLPBシセロ・コスタ)vsホベルト・サトシ(ブルテリア・ボンサイ)
http://videos.sapo.pt/zTZU63zVB0FmsiBYaolW 

相変わらずの凄まじい攻撃力・・・。
ガードを破壊したら、次の瞬間にはもう相手の逆サイドを伺っているんですね・・・。
サトシ選手のガードに戻す動きも凄いんですけど、レアンドロの動きがヤバ過ぎて手に負えない感じです。

これでレアンドロはマイケル・ランギ、JT、クロン・グレイシー、セルソ・ヴィニシウス、そしてこのサトシ選手といった世界的な達人のガードを全て破壊した事になりますね。

そして下になると一転、あのルーカス・レプリすら地蔵にしてしまうという、まさにメデューサのような粘着スパイダーを使いこなす名手ぶりを発揮!


まさに王者にふさわしい完璧さですね。
これまでもタイトルをたくさん手中におさめてきましたが、このムンジアル初戴冠はレアンドロの人生をさらに大きく変えるでしょうね。
素晴らしい才能を持った選手ですから、より一層の飛躍を期待しましょう!


あのレオジーニョのように、今まで見た事の無いような物凄いムーブで柔術史に名が残るような偉大な選手となって欲しいですね。

そして日本の期待を一身に背負ってムンジアルに殴り込んだホベルト・サトシ選手!


結果は残念ながら優勝はならず3位でしたが、レーヴィで3位はサトシ選手登場以前は考えられない事でしたよね。
素晴らしい成績だと思います。

5月のドゥマウ東京大会において、幸いにもサトシ選手と話すチャンスがあったのですが、その際サトシ選手が色々と興味深い話をしてくれたのでご紹介します。

まず自身の活躍について、世界中の柔術ファンが驚いている事を話すと
「ボクが一番驚いたよ!JTやランギ、レプリに勝った時、『なんで?なんで?これは本当の事?』ってずっと驚いていたよ!!」
と非常にフレッシュな回答をしてくれました。
また、サトシ選手がインストラクション業務をこなしながら日本でのみ練習している環境について、これまた世界中が驚いている事を伝えると、
「それみんなボクに聞くよ!『本当に日本だけで練習してるの?本当に?本当に?』って。本当だよ!!」
そして会場の試合を見ながら、こう話していました。
「黒帯は、面白い試合をしなくちゃいけない。柔術の凄さ・楽しさを伝えなくちゃいけない。試合に出て、面白い試合をする、これが黒帯の仕事。」
最後に日本中の柔術ファンがサトシ選手を応援していた事について「みんながボクを応援してくれた。それが分かって力もらった。本当に嬉しかったよ。」
と語ってくれました。

サトシ選手の活躍は、日本という練習環境にはまだまだ大きな可能性がある事を再確認させてくれましたよね。
そして柔術黒帯に対する明確な定義づけ、そして猛烈な自負心に驚かされます。
「試合に出て、素晴らしい柔術を見せる。」これが黒帯の仕事と言い切るサトシ選手、これからも僕らを魅了し続けて欲しいですね。

また今年の結果で目立つのは、黒帯メジオ級をグレイシー・バッハが制した事と、同じくバッハのホミーニョが復活優勝を果たした事です。
メジオは代々マルセロ・ガウッシアの独壇場で、バッハがメジオを制したのはなんと2002年以来という快挙です。
そしてその王者がカイロン・グレイシーではなく、オタービオ・ソウザだったのがまた意外でした・・・。


カイロンは近いうちにムンジアルを獲ることが期待されており、実際今年のパンナムも1つ上のメイオペサード級で優勝していましたが、今回のムンジアルは残念ながらケガで不出場でした。
かわって王者となったのが、ややダークホース的な存在のオタービオ!

もちろんオタービオはバッハの筆頭ホープですし、直前のスプリング・オープンでも好調だったのでいわゆる大穴的存在では無いのですが、まさかどうしても勝てなかった宿敵クロン、そして悲願の初戴冠に燃えるカラザンスを破って優勝するとは・・・。
大躍進ですよ。

ミディアム級決勝戦・・・オタービオ・ソウザ(グレイシー・バッハ)vsクラウディオ・カラザンス(ATOS)
http://videos.sapo.pt/FlQ7pM3hwEtVzQe0clKt 

クォーターからのぶっ倒しがかっこいいですねー。
同じ技を2回くらい見せていて、今後流行りそうです。
このクォーター・スイープはオタービオの得意技で、インストラクション動画で解説してくれている人がいます。

素晴らしいスイープでカラザンスの堅固なベースを崩し、そしてガードからキス・オブ・ザ・ドラゴン、そして足関節というカラザンスの狙いを防いで完封しました。

そして同じくスプリング・オープンでは優勝したものの、ヒザの怪我等でずっとイマイチ感が漂っていたホミーニョも見事に優勝を果たしました。

ミディアムヘビー級準決勝・・・ホムロ・バハウ(グレイシー・バッハ)vsハファエル・ロバト・Jr(ロバト柔術)

開始早々ロバトがサウロ・ヒベイロ式の、普通とは逆の方向くハーフ・ガードから見事にスイープを決めていますね。
しかしこのガードは現在だと、足を潰されてTTパスを喰らうリスクを負っています。
ここでもロバトは徐々にホミーニョの圧力に負け、TTパス・ポジションからガードを攻略されてしまっています。

ホミーニョの力強さもさる事ながら、ロバトは足も非常に長く、色々なガードを柔軟に使えるのですから、このガードに固執する事無くもっと様々な仕掛けをすれば良いのにと思ってしまいます。
ここの所タイトルを取り続け、調子の良かったロバトですが、仕掛けがワンパターンになって手詰まりになるいつもの良くないクセが出て、ムンジアルは必勝を期すホミーニョに敗北してしまいました。
そしてホミーニョがとても力強いムーブをしていますね。
ホジャーに次ぐ最強候補だった頃のように、物凄い圧力で攻めきっています。

軽量級の雄であるサミュエル・ブラガがまさかの早期敗退を喫してしまっていただけに、この両者の戴冠はバッハのチーム成績に大きな貢献を果たしたと言えるでしょう。

2011年ムンジアル・アダルトの部では無冠だったバッハのチーム成績ですが、今年は見事アダルト2位をゲットしました。
今年はバッハのコンペティション成績低下を危惧したゼ・ハジオラが急遽精鋭軍団を再編成し、猛訓練を施していた事は以前お伝えしたとおりです。

ガスマスクみたいなのして、特殊部隊の訓練みたいで凄まじいですね。
鬼軍曹の下、選手を鍛え直したバッハですが、その対策がまさに的中したようですね。


オタービオも今回の勝因をこう分析しています。
http://www.graciemag.com/2012/06/world-champ-otavio-sousa-teaches-to-lure-opponents-into-your-game/
「カラザンスを僕のゲームプランに乗せる事が狙いだったんだ。彼の得意な足関節やベリンボロ・ポジションを防いで、バックアタックを阻止しなければならない。彼は本当にバック取るのが上手だからね。」

「今年のムンジアルは、フィジカル面を最も重点的に強化したんだ。結局この数年は、自分の技術を最新のものに適応させる事に手いっぱいで、フィジカル面が少しおろそかになっていたんだね。」

バッハの主力インストラクターとして、1日4クラス以上のギッチギチのクラス・スケジュールをこなすオタービオの戴冠は、メンデス兄弟やミヤオ兄弟達のような1日中自分の練習のみをするスタイルとはまた違った成功例として、それに近い状況の人達の励みとなるのではないでしょうか。


また自身の道場を出したばかりのホミーニョが復活優勝を果たした事も、同じ事が言えると思います。

以前ホミーニョは来日した際、「ムンジアルを制するためには、生活の全てをそれにささげる覚悟が無いといけない」と語っていたそうですね。
環境を整備するのももちろん勝負のうちですが、そこは思うようにならないのが世の常、ある程度のバラつきは出てきてしまうとは思いますが、それよりも何よりも、勝ちたいと思う気持ちがどこまで強いか、そしてそういう思いの強さこそが、環境の不利を覆す可能性があるのではないでしょうか。

「頭の中から聞こえてくる『ムリだ、出来っこない』という声は嘘つきだ」


表彰台での写真を見ると、決勝で敗れた選手の多くはこの世の終わりみたいな顔をしていますね。

僕からすると「ムンジアル2位とか超凄いじゃん!」とか思っちゃいますが、前の記事でカイオ・テハが「タイトルは顧客への信用になる」といみじくも語ったように、柔術で生活する人にとってはそういう面において、1位と2位の差というのはとてつもなく大きいのでしょうね。

2位の選手達の陰鬱な表情に表れているのは、この1位への思いの強さに他ならないのだな、と改めて感じさせられた今年のムンジアルでした。